初めてのリトリートでの不思議体験

02.私のかけらを探す旅

記事を手繰っていくと、「使命を見つける」というリトリートの案内が。
「使命」このど真ん中の単語は、私がどうしても欲しいものなのです。
迷わず申し込みました。

言葉すらもない世界へ一歩

お盆の暑い最中、帰省で込み合う新幹線になんとか潜り込み、ローカル線を乗り継ぎ上田市の別所温泉まで来たのだけれど、どうにも明日のリトリートに行きたくない。

「どうかしてる…。」
ひとりで呟きながら、町内の観光名所らしきところを一周して(それは2時間くらいで終わった)どこかでお茶でもしようかと思案し始めたけれども、それらしきお店が見当たらなくて途方に暮れていた。

明日の午後には、3泊4日のリトリートが始まるというのに、行きたくない、参加したくない、帰りたい。心にはそんな言葉が満ち溢れていた(この時はまだ知らなかったけれども、何かデカいものが出てくる時には必ず、行きたくない君が発動するのよ)。

「ここまで来たんだから、楽しもうよ。」
自分に言い聞かせるように独り言ちると、山の上の神社に向かった。
何か迷ったことがあると、おみくじで神様に尋ねてみる。

神社さまは、遠くの山々を見渡せる小高い場所にあった。
お参りの前に一休みしようとベンチでしばらく瞑想していると、数組の参拝客が来ては去って行った。

お参りを済ませ、立派な本殿だったので、裏まで回って施された彫刻を見た。冬には雪が積もるだろうに、よく手入れされて美しく維持されていた。

私は、ここに来てよかったですか?何か学べるものはありますか?
そう尋ねてから、おみくじを引いた。学問のところにこうあった。
「最大の功績が得られる。」
行けって言われておるわ…。

そして、裏を見るとこんな歌があった
「あなたは今、門出の時。そのまま初心を忘れず進みなさい。」
涙が溢れてきた。嬉しいのか悲しいのかわからなかったけれど、涙が止まらなかった。

翌日の午後、駅前でリトリート施設の方にピックアップして頂き、女神山へと向かった。
収容人数からすると、かなり大きな宿泊施設を含む会場があるはずなのに「自然」を邪魔せず、自然以外に何もないような佇まいで、その清々しさが美しかった。

そこで、私は4日を共にする仲間たちと出会い、主宰の本郷綜海さんに初めてお目にかかった。長い話を短くすると、このリトリートの終盤、私は不思議な体験をした。

「絵を描く」というお題だった。題材はもう覚えていない。
前職はデザイナーでもあり、美術系の学校を出ていることもあり、絵を描くという行為は嫌いではない。しかし私にとって「描く」という行為は、ただ単に楽しいというものでもなかった。
「描く」を取り巻く周辺には様々な思いがこびりつき過ぎていた。

私は描きたくなかった。今まで「良い生徒」でいたけれども、どうにも気が進まなかった。やりたくないです。と、綜海さんに伝えた。いままでお行儀のよい生徒だった私から出た、初めての「イヤだ」だった。

数年経ったのに、今も彼女のその指先を覚えている。
優雅な動作でこちらに身体を向けると、細く長く品の良い指先でつまんだクレヨンを、こちらに差し出す。
それを私は、震える手で受け取りながら(あるいは拒否しながら)、いやだ、いやだ、と小さく首を横に振りながら呟いた。

聞き分けの無い子どもを叱るように
「描きなさい。」
と、 綜海さんは私に言った。

プツンと、音が消えた。

ここから先は記憶が定かではない。
静かだったはずのその場所に、ざわざわと人だかりの気配がある。
皆が、好奇の目で私を見ている。

でもそれが、身体のあるその場ではないことも、上の方から俯瞰して見ている私の意識は知っている。ここはどこだろう。私は何を見ているのだろう。
身体を動かしたかったが、身動き出来なかった。何かに縛りつけられているようだった。

上手く息が吸えなかった。
苦しい、苦しい。
いやだ、いやだ。
やめて、やめて! やめて!!

叫んだ気がしたその時、太ももが焼けるように熱くなった。
「足が!足が!」
私は思わず叫んでいた。
斧のようなもので、私の足は叩き折られ、そのまま海に突き落とされた。

激しい痛みと、息のできない苦しみに、憎しみの感情が渦巻いていた。ビルを薙ぎ払い、怒りをぶちまける断末魔の怪獣の最期のように、私は叫んでいた。
水しぶきと気泡の混ざった水面が遠ざかっていく。

それが過ぎると、徐々に悲しみの感情が湧いてきた。
どうして私がこんな目にあうのだろうか。と同時にそれを運命として受け入れている彼女の心も感じられた。彼女は、まだ少女だった。

遠くで綜海さんが、ゆっくり息をして、と声をかけてくれていた。
私はもう息なんてする必要がないのに。そう思いながらも息をした、息が出来ていることが不思議だった。

短いこの人生が、これで終わったのだなー、と漠然と感じながら、次々と流れ込んでくるその少女の感情を受け入れていた。

気持ちは不思議と穏やかだった。
その少女の人生を受け入れて、私と彼女はひとつになった。

沈んでゆく彼方から、温かい光が差し込んできた。
驚いて体を返すと、そこには地球があった。
その地球は温かいピンク色の光を放っていて、表情は見えないけれど、微笑んでいるような気がした。

そのピンク色の地球を眺めていると、何とも言えず幸せな気分になった。その幸せな気分は、でもずっと昔から知っていた気がする。

地球と、宇宙と、ひとつになった気がした。
すべてと溶け合って、私とそれ以外のものに境界線などないようだった。
すべての感覚が研ぎ澄まされ、数百メートル先の小鳥の息遣いでさえ感じられそうな気がした。
完全にハートが開いた瞬間。

怖い!
私の身体に意識が戻り、開いた感覚すべてを閉じていった。

ざぁぁぁぁっというノイズがうるさかったが、しばらくするとそれが、蝉たちの合唱であることがわかった。

戻ってきた。

耳鳴りと頭痛がひどく、まだぼーっとしている。
目を開けると、仲間が心配そうに見守ってくれていた。
「ありがとう。」
かすれた声でい伝えると、私は足を確認した。

足、ある。よかった。
水を飲もうと立ち上がろうとした。

その時、私ははじめて、足に体重が載っているのを感じた。
いや、今までだって体重は支えてたでしょうよ、というのはもちろんそうです。
しかしながら、変な話だけど、私はそれまで自分の足がこれほどしっかり自分の身体を支えてくれている、というのを感じたことがなかったのだ。

その日は特に、それを感じられない日だった。
綜海さんの教えのひとつに、グラウンディングがある。
多くの方がグラウンディングを伝えているけれど、綜海さんの教えるグラウンディングは、身体の中心を感じていくという方法。

詳細に、自分の身体を感じていくのだけれど、どうも私はその感覚がにぶい。
特に足が地面を踏みしめている感覚というのが、元々あまりないのだ。
それなので、どうにもグラウンディングがしっかりしない。
よくわかんないけど、私はどうもフワフワしているなぁという感じがしていた。

それが、足がしっかりついた感じ。
足が地面を踏みしめている感覚、というのがはっきりとわかった。
どん、と真ん中にいる感覚、というのだろうか。
揺るぎない「自分」って感じられるものがある。

え、足?
その原因、足なの?
しかも過去生っぽいところから?

諸々混乱した私は、考えるのを辞めた。
考えるにも、知識が圧倒的に足りなかった。

続かないけど次の話→
「なんとなく」を選択したときに開けた道。

コメント

  1. […] から記憶が流れ込んできた。この怖さは、全宇宙の愛が雪崩のように私に流れ込んできた、あのときの「怖さ」と同じだった。(詳細は、初めてのリトリートでの不思議体験 へどうぞ) […]

  2. […] 続き→初めてのリトリートでの不思議体験 […]

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